【夕張】財政再建団体・夕張市の藤倉肇市長が二十七日、就任一カ月を迎えた。札幌の会社経営者から古里の再建に立ち上がっただけに、市役所内では「株式会社夕張」を合言葉に問題の迅速処理を掲げる一方、市民にも「自立」を説く日々だ。ただ十八年に及ぶ再建計画の内容は厳しく、「藤倉流」の民間手法には課題も多い。
この一カ月で最大の懸案は副市長選びだった。最終的に十五日の市議会で、羽柴和寛前財政部長の選任同意を取り付けたものの、市の不適切な会計処理の責任者の一人とあって、羽柴氏本人は何度も固辞。市長周辺からも「民間市長の改革色が見えなくなる」と反対の声が上がった。
市長自身、他薦も含む外圧の大きさに、「要請は取りやめ」と周囲に漏らす局面もあった。しかし議会直前の十四日朝、「自分の意志をあくまで通したい」と最後の説得に乗り出し、羽柴氏を口説き落とした。「断固実行」の見本例だった。
八日の老人クラブ連合会総会では、あいさつで「みなさんの財産がほしい」といきなり切り出し、九十人の出席者を驚かせた。再建で苦しい市に対し、六月二十二日から始まる「再生市民会議」に出席し、知恵や経験の提供をと呼びかける趣旨だった。市長自身は「企業の社長なら、(あいさつで)冗談を言うのは当たり前」と言う。
旧夕張北高の同級生である後藤健二前市長が、市役所出身らしく、手堅い行政マンぶりを見せていたのとは対照的に、藤倉市長は「行政も金もうけが必要」と言い切る行動派だ。社長時代の知人であるタレント日高晤郎さんや経済人など来客も多く、時には昼の弁当を抜くこともある。
こんな様子に、同市内の六十代の会社社長は「後藤さんと違い、いつも飛び回っている。良いこと」と評価する。ただ、「再建計画で何もできない市長像を、無理に壊そうとしている面も見える」と、市長の思いと現実の乖離(かいり)を指摘する。
出張旅費がない現実を怒った二十四日の記者会見についても、市民からは「立候補前から分かっていたことでは」と冷めた反応も出ている。こんな住民の思いをどう一つにまとめ、再建計画の着実な実行を求める国や道に伝えていくか。「夕張のセールスマン」(市長)の真価が問われそうだ。
(北海道新聞より引用)
2007年6月6日水曜日
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