絶滅種をよみがえらせ夢のキャビア生産へ-。北大大学院水産科学研究院(函館市)の研究グループが、道内の河川で昭和初期まで生息し、現在は河川での絶滅種に指定されているミカドチョウザメの人工ふ化に挑戦している。同大の施設内で飼育中の雌一匹が五月にも産卵予定で、成功すれば国内初。卵は粒が大きく、キャビアは最高級という。同グループの足立伸次教授は「一匹でも多く自然界に戻し、長年のロマンを実現させたい」と意気込んでいる。(函館報道部 渡辺淳一郎)
同大七飯淡水実験所(渡島管内七飯町)の直径五メートル、深さ一メートルの飼育用円形水槽で、推定六-三十歳の雌雄六匹が悠々と泳ぐ。体色は茶。どう猛なイメージと裏腹に動きはゆったりしており、小さな丸い目や口元のひげがかわいい。背のあたりを触ってみるとぬるっとした。
道自然環境課によると、一九三五年(昭和十年)ごろまで石狩川、天塩川などの道内河川や沿岸に生息。産卵のため川に上ったときなどに漁獲され、札幌の魚市場で取引されたほか、肉や卵を煮て食べるアイヌ民族もいたという。
しかし、河川改修の影響などで激減。北海道レッドデータブックで二〇〇一年、環境省のレッドリストで〇七年、河川での絶滅種に指定された。現在、北海道やサハリンの沿岸でわずかに生息しているが、海域でも絶滅の可能性がある。国内で飼育されているのは、主に一九九〇年代に定置網などで混獲された同実験所の六匹と、茨城県の水族館の一匹だけ。
産卵予定の雌は体長一・七メートル、体重三八キロで、推定三十歳。三月初め、卵が直径三・九ミリに育ち産卵できることを確認した。飼育に利用している付近の川の水温が、産卵に適した十度以上になる四月末をめどに、ホルモン注射を打ち卵を採取、雄の精子を取り出し人工授精させる計画だ。
研究グループは昨年五月、別種のダウリアチョウザメの人工ふ化に国内で初めて成功。ホルモン注射でも産卵しない一抹の不安もあるが、足立教授は「経験を生かして水温管理を徹底し、万全を期したい」と話す。
国内では胆振管内白老町などで、ベステル種の養殖が行われているが、キャビア生産は少量だ。今回のふ化が成功し、順調に成長すれば十年後に生産可能となる見込みで、ある函館市内の飲食店経営者は「最高級の道産キャビアであれば、ぜひ使ってみたい」と言う。
足立教授は「将来は河川に放流し、自然繁殖を目指したい」と目を輝かせている。
(北海道新聞より引用)
0 件のコメント:
コメントを投稿